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誉田哲也の「プラージュ [読書]


プラージュ (幻冬舎文庫)

プラージュ (幻冬舎文庫)

  • 作者: 誉田 哲也
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2017/06/28
  • メディア: 文庫

昨今の世の中、一度過ちを犯した人間の表舞台への復帰は難しい。もっとも昔からそうだったのかもしれないが、最近は頼みもしないのに過去のことを穿り返す輩がいる。当事者やその関係者ならまだしも、全く無関係の人が騒ぎたてる。犯罪は確かに反社会的な行為であることは疑うべくもないが、不特定多数の人たちに総スカンを食らう風潮は昔とはくらべものにならない。

「プラージュ」とはフランス語で海辺のこと。過去の何らかの過ちを犯した人たちが集うシェアハウスの名称だ。物語は登場人物である彼らの過去を振り返りつつも決して悲壮感を漂わせることなく、今を生きている人たちの姿を描いている。なぜ「プラージュ」という名前なのかは読み進めていくうちに明らかになる。

小説としての仕掛けがあってここでそれを書くのはネタバレになるのでやめておくが、既にドラマ化もされているので、ご覧になった方もいるかもしれない(→https://www.wowow.co.jp/dramaw/plage/)。

最後はハッピーエンドといってもよいが、なかなかに考えさせられる本。何がきっかけで犯罪者になるかわからない。ここ「プラージュ」の住人にならないとは限らないという不安もいだかせる作品。


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上田秀人の「翻弄-盛親と秀忠」 [読書]

翻弄 - 盛親と秀忠

翻弄 - 盛親と秀忠

  • 作者: 上田 秀人
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2017/09/20
  • メディア: 単行本
この本のタイトルをみたとき「面白い人選だなぁ」と思いました。既にさんざんネタにされてきた関ヶ原前後をテーマとした作品においては、まさに視点が大事。この角度、目線から関ヶ原合戦をみると・・・という少しひねった切り口でないとなかなか楽しめません。
天下分け目、世紀の合戦に徳川主力軍を預けられながら間に合わなかった秀忠。四国統一を成し遂げた(厳密にはその直前)長宗我部元親を父に持ち、関ヶ原では西軍に付ながら、さしたる戦果を挙げることなく、かつ時流から反徳川勢力のレッテルを貼られ没落していった盛親。
旗幟鮮明が最大のミッションであるこの時代において、なんとも中途半端な立場に置かれてしまった二人。結果からすると、天下人に上り詰めた家康の息子であり、家康を盛り上げた側近に恵まれた秀忠は生き残り、第二代の征夷大将軍として人生をまっとうしたのに対し、盛親は元親、信親の後を継ぐ際のごたごたと京や大坂に近かったにもかかわらず、政治的な駆け引きや時流を読む力がなかったこと、ブレーンにも恵まれず、大坂の陣で露と消えてしまいます。
時代に翻弄された二人。私は間違いなく盛親タイプの人間です。

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麻見和史の「警視庁文書捜査官」 [読書]

警視庁文書捜査官

警視庁文書捜査官

  • 作者: 麻見 和史
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2015/01/29
  • メディア: 単行本
この本を読むきかっけになったのが、本書を原作としたテレビドラマ、「未解決の女 警視庁文書捜査官」を観たからでした。主演の波瑠さんや共演の鈴木京香さんが特段好きだったからではない(嫌いでもないけど)のですが、事件モノの脚本が初めてという大森美香さんの脚本がよいのか、原作がよいのか興味を持ったから。
麻見先生の本は初めてだったのですが、原作を読んでびっくり!テレビドラマとは全くといっていいほど別物でありました。正直、原作の方が圧倒的に面白かった。テンポの良さと謎解きに至るまでのストーリー描写がわかりやすい。もっとも主人公の鳴海たちがさまざまな局面で活躍する様は、「どこが文書捜査官?」と思わせる節もありましたが・・・
テレビドラマでは、そのあたりを強調する設定にこだわった形でプロットを組んだ感じでしょうか?
原作の鳴海理沙、なかなか良いキャラだと思います。

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五十嵐貴久の「波濤の城」 [読書]

波濤の城

波濤の城

  • 作者: 五十嵐貴久
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2017/10/11
  • メディア: 単行本
炎の塔 (祥伝社文庫)」に続くパニックシリーズの第二弾。今度は船です。超豪華クルーズ船の「レインボー号」が漂流物と接触、排水装置の不具合から浸水が始まったのに加え、超大型台風との遭遇により沈没の危機に!というお話です。

登場人物、主人公は「炎の塔」で活躍した女性消防士。休暇を利用して乗船したクルーズ船が予期せぬ沈没の危機に直面するという展開は、かつて不幸を呼ぶ男として全世界に勇名をはせた「 ダイ・ハード ブルーレイコレクション(5枚組) [Blu-ray]」のジョン・マクレーン(ブルース・ウィルス)さながらです。

本書は遭難、沈没に向けた条件設定が全てそろっています。プライドが高く、自己保身に終始する船長とその腹心の部下たち。利権(カジノ法案推進、IR推進派の国会議員)を嵩に着てわがままな態度をとる有力者。組織の意向を盾に上司のいうことを聞かない管理職・・・五十嵐先生はここ数十年に実際に起こった海難事故のトピック

を参考にしたそうですが、まさに大パニック!乗船していたらこれは助からん!という気持ちになりました。

事故に導く要因を作ったのは、登場人物それぞれが持つ職業や使命の矜持を忘れた人たち。それを回避、阻止し、人命救助に命をかけた登場人物たちはそれぞれの立場に矜持を持った人たち。

昨今の世の中、矜持を忘れた人があまりにも多すぎるような気がします(気のせい?)。

それにしても五十嵐先生のパニックシリーズ、まだ続くようです。日本版ジョン・マクレーン(五十嵐版では女性ですが)誕生の間近です!

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門井慶喜の「家康、江戸を建てる」 [読書]

家康、江戸を建てる

家康、江戸を建てる

  • 作者: 門井慶喜
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2016/02/09
  • メディア: 単行本
なぜか最近“江戸”がブーム?NHKスペシャルの「大江戸シリーズ」や同局の「歴史秘話ヒストリア」などで江戸開府にまつわる番組が相次いで公開されています。
オリンピック前の再開発による新たな発掘や新資料の発見、明治維新(戊辰戦争)150年という節目の年に当たるということもあるのでしょうか?18世紀には人口100万人を数え、当時としては世界最大の規模に発展したという江戸。漠然と明治維新前の封建時代の江戸が全て否定される風潮がずーっと続いてきただけに(誰のせいだ?)こうした見直しの動きは個人的には非常にありがたいというか、大歓迎である。
本書は1590年の豊臣秀吉による小田原征伐後の仕置きによって関東移封を命じられた家康が、太田道灌築城といわれる江戸城を新たな拠点とし、街づくりを始める様子が描かれています。利根川の流れを変えた伊奈一族、小判=新貨幣鋳造に携わった橋本(後藤)庄三郎、上水道の整備を進めた大久保藤五郎と七井の百姓、そして春日与右衛門、石きりと石積みに命を懸けた五平と喜三太、江戸城天守閣の建設を巡る秀忠と家康の企図・・・江戸が実質的な首都としての機能を備えていくはじめの一歩が描かれています。
合理的かつ科学的で今の発想にも通じる考え方。何かを成し遂げようとする者が醸し出す迫力、情熱というものが素直に読み取れる内容。そうか!こうだったのか!という小さな感動の連続で面白かった。来年の正月時代劇で映像化されるようです。楽しみです。

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伊坂幸太郎の「AX アックス」 [読書]

AX アックス

AX アックス

  • 作者: 伊坂 幸太郎
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2017/07/28
  • メディア: 単行本
グラスホッパー (角川文庫) 、 マリアビートル (角川文庫) に続く殺し屋シリーズ。前の2作に共通しているのが、最強の殺し屋といわれる連中が常人離れしているということ。もっと砕いていえば、少々おバカさんだったり、常識はずれだったりする(そういう風に描かれている)。本作の「兜」はそんな殺し屋連中の中ではきわめて常識人であり、恐妻家である。一見するとどこにでもいそうな家族の一員であり、もし何かのきっかけでその家の主人は殺し屋だったことがばれた場合、「とても信じられない」「あんな人のよさそうなご主人が・・・」「人は見かけによらないものですね」なんていわれるキャラクターだ。

冷酷非情の裏の顔・・・本書は主人公の妻と息子との日常を描くことで、主人公「兜」の性格付けを仕上げ、読者である我々との距離を縮め、共感を得ることで作品に引き付ける。家族との絆がテーマ?と思わせるのは「兜」がビルから飛び降りる際に浮かんだ映像・・・

伊坂先生独特の軽妙でリズム感のある文章は読みやすいし、彼が生み出すキャラクターの魅力的。こんな世界観の作品、今後も続けて欲しいと思った次第。

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誉田哲也の「硝子の太陽R-ルージュ」 [読書]

硝子の太陽R-ルージュ

硝子の太陽R-ルージュ

  • 作者: 誉田哲也
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2016/05/11
  • メディア: 単行本
姫川玲子シリーズにして「ジウ」とのコラボシリーズで「 硝子の太陽N - ノワール」とのリンク作品。一家惨殺という事件を追うという展開ですが、その背景にあるのは戦争であり、日本を取り巻く国際情勢であり、日本の置かれた立場=具体的には日本とアメリカの関係だったりします。
登場人物であるベトナム戦争に従軍した経験のあるアメリカ人の口から、戦後日本の歩みと日本という国のポジションが語られますが、そのシンプルにして単純な状況が本書に描かれている事件のきっかけになっているかもしれません。
日本国内、沖縄を取り巻く状況に絡め左翼と目される人物の暗躍はガンテツこと勝俣の案件として結論は出てないのですが、この曖昧な結論こそが今のすっきりしない日本そのものを映しているような感じも受けました。
姫川ねえさんのキレの良さは健在。読み物としては追っかけたいシリーズの一つではあります(このシリーズの殺人描写はかなりえぐいもので読む耐えない感じですが・・・)

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蘇える鬼平犯科帳-池波正太郎と七人の作家 [読書]

蘇える鬼平犯科帳―池波正太郎と七人の作家

蘇える鬼平犯科帳―池波正太郎と七人の作家

  • 作者: 逢坂剛
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2017/10/01
  • メディア: 単行本
シャーロックホームズやジェームズボンドなど、原作者が亡くなっても新たなストーリーが求められるというのはそれだけそのキャラクターを支持している人が多いということなのでしょう。冒頭にあげた二人は架空の人物でありながら、ファンの間では実在の人物として扱われているふしがある・・・。著作権を管理したり、ファンクラブなりの承認を得る形で新たな作品が今も出版されています。
さて、鬼平こと長谷川平蔵も日本においてはホームズやボンドに匹敵するキャラクターです(私見ですが)。もっともこちらは実在の人物であり、存命中の功績も記録が残っている人です。この人物をスター化したのが、今は亡き池波先生。彼の書いた鬼平がフィクションでありながら実在の長谷川平蔵その人という状態になっている。ちょうど司馬遼太郎の書いた坂本竜馬が竜馬像のデファクトになっていると同じ。
さて、本書はその池波先生のオリジナル作品1本と、逢坂剛、上田秀人、梶よう子、風野真知雄、門井慶喜、土橋章宏、諸田玲子の諸先生が書いた鬼平作品7本が収録されています。
いずれの先生も時代小説では御馴染みの顔ぶれ。家督をついでから火付盗賊改方に就くまでの時代の平蔵にスポットを当てた作品、うさぎこと木村忠吾が活躍する作品に加え、鬼平以外登場人物がまったくのオリジナルの作品もありで、その内容はかなりバラエティに富んでいますが、鬼平の世界観がそのまま。みなさんの鬼平に対する愛がそうさせたのでしょう。
アプローチとして面白かったのが、風野真知雄の作品。彼のシリーズ、「耳袋秘帖」の外伝という形で掲載されています・・・直接鬼平が出てこなくても"鬼平観"が漂っているところがすごい!
お薦めの一冊です。 

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高橋克彦の「水壁 アテルイを継ぐ男」 [読書]

水壁(すいへき) アテルイを継ぐ男

水壁(すいへき) アテルイを継ぐ男

  • 作者: 高橋 克彦
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2017/03/11
  • メディア: 単行本
今年は「明治150年」なそうな。しかし、東北人にとっては「戊辰150年」である。官軍という名の軍隊に故郷を蹂躙され、戦後は「一山百文」と揶揄され、さげすまれたきた150年である・・・この西から東、そして北という国内における侵略の歴史は戊辰戦争が初めてではない。
古くは阿弖流為、母礼と坂上田村麻呂ら朝廷軍との戦い、その後の源頼朝の奥州征伐、豊臣秀吉の奥州仕置、九戸政実の乱など時代の節目、変わり目において新しい勢力が全国を制覇する際、最後の戦いの場となるのが東北(陸奥、出羽/奥州)の地である。
本書は阿弖流為たちが坂上軍に投降してから約70年後の元慶の乱の顛末を描いた作品。天日子という阿弖流為の末裔がリーダーとなって蝦夷を率いて戦う。
多くのサポーター?が主人公の下に参集し、勝利を収めていくという展開は高橋先生の奥州・蝦夷ものの定番。そういう意味で裏切らない作品。
まだまだ東北には埋もれた名もなき英雄が埋もれていると思う。高橋先生も御歳だけど戦う蝦夷、戦う東北作品がもっともはまっていると思う。無名の英雄発掘!作品化、期待してます!


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アンソニー・ホロヴィッツの「モリアーティ」 [読書]

モリアーティ

モリアーティ

  • 作者: アンソニー・ホロヴィッツ
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2015/11/28
  • メディア: 単行本
モリアーティといえばシャーロック・ホームズの最大にして最強のライバル。物語はホームズとモリアーティの直接対決=ライヘンバッハの滝の決闘の直後から始まります。この闘いによりホームズはしばらく行方をくらますことになりますが、本書では滝壺の中から引き上げられたモリアーティの死体検案に立ち会った(つまりモリアーティは死んだ!)アメリカのピンカートン探偵社の探偵とスコットランド・ヤードの警部の二人を主人公にした物語となっています。
モリアーティとアメリカの犯罪者集団が大西洋を挟んで連携するのを阻止するという内容ですが(モリアーティ亡き後、アメリカの犯罪者集団はその後釜に座る)、物語の基本的構成は警部はホームズ役、ピンカートンの探偵がワトスン役というホームズシリーズの原則を貫く形で進んでいきます。
『モリアーティはそう簡単に死ぬはずがない』という潜在意識を読者に持たせつつ、最後の最後で「あっ!」と言わせる展開はテレビ脚本などを手掛ける作者の得意とするところかも。
いずれにせよ、ホームズをそれを取り巻くキャラクターの奥深さという点で最強のコンテンツ。ホームズ絡みでは新作の部類でしょうが、どんどん広がりがみせるのはファンとしてはありがたいというしかありません。


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