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土橋章宏の「引っ越し大名三千里」 [読書]

引っ越し大名三千里 (ハルキ文庫)

引っ越し大名三千里 (ハルキ文庫)

  • 作者: 土橋章宏
  • 出版社/メーカー: 角川春樹事務所
  • 発売日: 2016/05/12
  • メディア: 文庫
超高速! 参勤交代 (講談社文庫) 超高速!参勤交代 リターンズ (講談社文庫) で御馴染み、土橋先生の歴史モノ。松平直矩という実在の大名が山形➔姫路(以上、父親の代)→村上➔姫路➔日田➔山形➔白河という幾度も転封されたというお話。現在のサラリーマンでもここまではないという引っ越し履歴。土橋先生の作品だけに悲壮感はないものの、金策や減封に伴うリストラなど、さぞかし当時は厳しい状況だったことは想像に難くありません。それらの顛末を面白おかしくジェットコースターに乗っているがごとくのスピード感をもって一気に読ませます。

徳川綱吉の時代、敵は柳沢吉保。これも映画になるのかしらん。参勤交代シリーズに比べるとエンタテイメント性にはやや欠けますが、「無私の日本人」が原作の、 殿、利息でござる! [DVD] のような雰囲気を持った作品です。

天野純希の「燕雀の夢」 [読書]

燕雀の夢

燕雀の夢

  • 作者: 天野 純希
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2017/02/25
  • メディア: 単行本
歴史に名を遺した英傑たちの父親たちの話です。
上杉謙信の父、長尾為景
武田信玄の父、武田信虎
織田信長の父、織田信秀
伊達正宗の父、伊達輝宗
徳川家康の父、松平広忠
豊臣秀吉の父、木下弥右衛門
戦国から天下統一までの過程の中、いずれも地方の豪族にすぎなかった英傑たちの父。いずれも悲惨ともいえる最期を迎えた人たちでありながら、それぞれの子供たちが成長する何らかの下地を作ったということでしょうか?彼らがいなければ歴史は動かなかったわけで、そういう意味ではデカした!親父どの!という感じでしょうか。
戦国のクライマックスをすこしハスからみた感じで面白かった。お奨めの一冊です。

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富樫倫太郎の「北条早雲-明鏡止水篇」 [読書]

北条早雲 - 明鏡止水篇

北条早雲 - 明鏡止水篇

  • 作者: 富樫倫太郎 著
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2017/04/19
  • メディア: 単行本
北条早雲の一代記もいよいよ晩年に差し掛かってきました。本篇は、小田原城奪取、伊豆に次いで西相模を手中に収めたところまで。
本シリーズ最大の敵、足利茶々丸を倒したくだりが本篇における最大のクライマックスだと思いますが、その最後は実にあっけないというか、描写としては淡々と描かれてている感じ。茶々丸の悪行ぶりはその容姿の描写と相まって迫力があるものの、早雲(伊勢宗瑞)自身があっさりかわしていることもあり、後のくる悲劇についても他の小説家であれば相当激しい描写になるところが平易な記述に終始しており、盛り上がりに欠けた印象もあります。
まあ、少ない兵力で知恵と常識破りの発想から国盗りを進めていく宗端の行動はさわやかではあるものの、物語としての強弱はあってもよいかな?とは思いました。
さて、次回作がおそらく本シリーズの最終話になるのでしょうか?残る直接的な敵は三浦氏。三浦道寸とその息子荒次郎が相手。特に荒次郎は、ゲームキャラ的に想像するに相当強烈。
物語の最後を飾る相手としては良いのでは?楽しみです。

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雫井脩介の「犯人に告ぐ2」 [読書]

犯人に告ぐ2 闇の蜃気楼

犯人に告ぐ2 闇の蜃気楼

  • 作者: 雫井 脩介
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2015/09/16
  • メディア: 単行本
テレビ化もされた「 犯人に告ぐ 」の続編。今回は振込詐欺グループが誘拐ビジネスを展開するというお話。ビジネスというところに意味があって、単純な身代金誘拐事件とは一線を画すというもの。
綿密な計画のもとで展開される誘拐ビジネスのスマートさには舌を巻きました。この本を参考に現実にこうした犯罪が起きないかと心配してしまいました。
もっとも一方の主人公である犯人グループの犯罪に関わるまでの心理、動機にいまいち納得がいかないというか浅い感じがしました。まあ 大した理由もなく犯罪に手を染める輩が多い中で、理由や背景を求めてもしょうがないのでしょうが、物足りなさを感じました。
天才的犯罪者「淡野くん」は依然野放し・・・まだまだこのシリーズ続きそうです。

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矢野隆の「鬼神」 [読書]

鬼神

鬼神

  • 作者: 矢野 隆
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2017/03/08
  • メディア: 単行本
酒呑童子の話です。
京都の近くにある大江山に住まう鬼、酒呑童子とその一味を源頼光とその部下である四天王(渡辺綱、坂田金時、碓井貞光、卜部季武)が「退治」した伝説がベースになっています。坂田金時はご存知、金太郎さんですね。
この話、酒呑童子ら鬼とされた人々は、いわゆる「まつろわぬ民」であり、帝や朝廷にしたがうことなく、独自の文化、行動様式を持ったまごうことなき「人」であり、蝦夷や隼人といった人々を同じ人々を指します。
異民族扱いされるならまだしも「鬼」として位置づけられ、当時の民衆にとっても恐れられ、討伐すべきものとして正当化されました。
平安時代、藤原道長の時代、朝廷が日本全国を支配したとはいえ、実際には反朝廷を掲げるものたちや大和の支配を良しとしない勢力が日本全国に存在したことは想像するに難くありません。
本書の場合、酒呑童子(みずからは朱天と名乗っていたという設定)ら鬼の一族は「山の民」として朝廷の支配するところとは一線を画していたこと。大江山に資源があったことからその資源をわがものとするために朱天たちが邪魔だったことなどが物語のベースとなっています。最後は坂上田村麻呂と阿弖流為のように征服する側とされる側のリーダー間の心の交流が描かれていますが、物語を終息させる上ではお決まりのパターンともとれる展開。こうした鬼征討というストーリーによる正当化が実は一番怖かったりするのではないかと思ってします(少し飛躍しているかもしれませんが)。

読み物としては矢野さんの作品らしく、アクション満載で面白く読ませていただきました。

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荻原浩の「僕たちの戦争」 [読書]

僕たちの戦争 新装版 (双葉文庫)

僕たちの戦争 新装版 (双葉文庫)

  • 作者: 荻原 浩
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2016/08/04
  • メディア: 文庫
「戦争」を現実のものとして感じている日本人はほとんどいないのでしょう。北朝鮮のミサイルだったり、その抑止に自衛隊の艦船がアメリカの空母を護衛したり、いわゆる「共謀罪」法案の可決等、世の中がどんどんきな臭くなっているという見方もある一方で、平和を目いっぱい享受している日常がある。
世界各地では依然として戦争状態にある地域があって、テロもやむことはなく、むしろ以前より増加している。そんな状況から危機感を煽りテロや戦争を回避するという名目のもとでロクな議論もせずに(少なくとも国会ではそもそもまともな議論になっていないような気がしますが)いろんなことがまかり通っている感じがどうもいやな感じがします。
本書は現代の青年と終戦半年前の青年とが入れ替わり、それぞの時代を生きる、という話ですが、現代から過去にタイムスリップした青年の行動が、戦前の価値観によって大きく変化していくという状況は、いくら本心では別のことを思っていても行動において逆らえない社会、状況になっていくという、ある種、恐ろしいことが描かれています。
そんなことにならないように(手遅れにならないように)私たちは世の中の動きに敏感になっていく必要があるのではないでしょうか。物語は実に軽いトーンで書かれていますが、それぞれの時代に生きる立場になったとき、耐えられるのか?本書を読んでみてしみじみ思った次第です。

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宮部みゆきの「希望荘」 [読書]

希望荘

希望荘

  • 作者: 宮部 みゆき
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2016/06/20
  • メディア: 単行本
「誰か」、「名もなき毒」、「ペテロの葬列」等、一連のシリーズの最新作です。もう読んだ方も多いかと思いますが、杉村三郎が主人公の最新作、待ってました!という感じです。
このシリーズの面白さ、実はドラマ化されるにいたってその頂点を極めたような気がしています。原作本の面白さがあってのことなのはいうまでもありませんが、小泉孝太郎演じる杉村三郎のイメージは私にとってはピッタリはまったという感じで、周りの登場人物のキャスティングも良かった。
無論、ドラマなので演出家を始めとするスタッフがきちんと作りこんだことが良かったのかもしれませんが、原作本の世界観を見事なまでに映し出したのは素晴らしかった。
よって本作についても同じスタッフ、キャストによる映像化をお願いしたい、と思いつつ読んだ次第。残念ながら義父役の平幹二朗さんはお亡くなりになしましたが・・・・原作本からドラマの新作を期待するというのも変な話かもしれませんが。

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上田秀人の「竜は動かず-奥羽越列藩同盟顛末」 [読書]

竜は動かず 奥羽越列藩同盟顛末 上 万里波濤編

竜は動かず 奥羽越列藩同盟顛末 上 万里波濤編

  • 作者: 上田 秀人
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2016/12/07
  • メディア: 単行本
竜は動かず 奥羽越列藩同盟顛末 下 帰郷奔走編

竜は動かず 奥羽越列藩同盟顛末 下 帰郷奔走編

  • 作者: 上田 秀人
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2016/12/07
  • メディア: 単行本
幕末の奥羽越列藩同盟関係の書籍は何作か出ていますが、仙台藩の玉虫左太夫にスポットを当てた著作は初めてではないでしょうか?もっとも玉虫左太夫とはそもそも誰?なる人物は誰?というところから言及すべきでしょうか?
妻の死をきっかけに仙台藩を出奔、江戸に出て林復斎のもとで学びながら林のネットワークの中で多くの人と交誼を結び、ついには日米修好条約の批准使節団に同行するまでになった人物。帰国後は仙台藩に召し出され、藩校の指南にまで出世するものの、幕末の動乱の中で主家を守るために奮闘、大槻磐渓とともに奥羽越連判同盟の成立にかかわり、軍事局副頭取の役職を得る。仙台藩降伏の後は主家をたぶらかし新政府に楯突いた責任を問われ切腹してその人生を終えた・・・
とまあ、こんな略歴ではありますが、尊王攘夷という大義名分の政治的対立のあおりをくらって失意の人生をおくってしまったという不遇の人といえましょう。彼はアメリカという国を実際にみて当時の日本にはない活力とその背景にある仕組み、社会を体感しました。また帰国の際には欧州各国の植民地の惨状を目の当たりにし、このままでは日本も同様になるとの危機感をいだきます。
勝海舟、久坂玄端、坂本竜馬等、幕末きっての人物たちと会い、これからの日本について議論を重ねますが(むろんフィクションでしょうが)、何かかみ合っていない。日本国内の目の前の勢力争い、権力闘争の大義名分と海外での経験から日本を俯瞰してみようとした玉虫の視点は全く交わっていなかったのではないか?それは硬直化した仙台藩や奥羽越列藩同盟の中でも同様で、玉虫の想いとは別次元で交わされるステージの中で結果として中途半端にならざるを得なかったということではないかと思います。
いずれにせよ、今まであまりスポットの当たらなかった人物を主人公に据えた本書は今までにない幕末ものとして楽しめました。欲をいえば帰国後からの展開に重きをおいても良かったのでは?なんて思いました。


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真保裕一の「脇坂副署長の長い一日」 [読書]

脇坂副署長の長い一日

脇坂副署長の長い一日

  • 作者: 真保 裕一
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2016/11/04
  • メディア: 単行本
たった一日の出来事ながら、密度の濃い内容と言えます・・・とは言いつつ昨夜読了したのですが、もう一度読まないとなっ、と今思ってます。
物語の進行に合わせて時刻が表示されているのですが、「長い一日」というタイトルに引っ張られて読む側が煽られているような錯覚に陥り、内容を吟味するヒマもなく文字面を追っていってしまった感があります。アイドルの一日署長イベントの際にある種の事件が起きるのですが、その事件の背景や遠因を巡ってさまざまな登場人物がなぞの行動を引き起こす・・・ラストでその真相は明らかになるのですが、事件を追う側の動機なりモチベーション・・・こいつら絶対許せない的なものがよく伝わってこなかった(読み込めなかった)感じです。
ゆえにジェットコースター小説なのでしょうが、本作の面白さを見極めるには再読が必要と考えている次第です。しかし、あんな終わり方で主人公の脇坂副署長の将来が気になりました・・・警察組織内で二大派閥を敵に回して大丈夫なのでしょうか・・・なんてね。

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池井戸潤の「陸王」 [読書]


陸王

陸王

  • 作者: 池井戸 潤
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2016/07/08
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

池井戸節全開の本作、楽しませていただきました!

今回の舞台は創業百年の伝統を持つ足袋製造業。目の付け所がなかなかですな。「下町ロケット」や「空飛ぶタイヤ」もいわゆる中小企業ですが、大企業に対する中小企業であって、モノづくりの会社としては規模も大きいと感じていました(正真正銘の中小零細しか経験の私にとっては・・・という意味ですが)。

小説としての組み立ての観点からみれば、下請け、孫請けという構図としての面白さはありましたが、本当の意味での会社の体力とかを考えると、ある種“贅沢”な闘いともいえなくはなかった。むろん人間ドラマとしての面白さが本質なので、作品自体を否定するつもりは全くありません。

さて、本作ですが、そういう意味では年商1億円にも満たない会社が新規事業に向かって突き進むというドラマに加え、駅伝、マラソンという要素を組み入れながらの展開は、ある意味面白くないはずはない!という作品です。

今回の場合、世界的にも大手であるスポーツ用品メーカーが主な敵役となりますが、今までの作品と比べると非常にわかりやすい相手であり、少々、露骨すぎるきらいがあったのが鼻についたかな。

むしろ、味方の側にいながら主人公の会社を支援できない・・・という角度の方が、物語としての現実味をより高めたような気もします。

いずれにせよ、さまざまな人たちが事業立ち上げに奔走する中で身につまされる部分もあり(一度会社をつぶしたものは会社をつぶす癖がつく、というくだりは痛っかった)、物語は究極の理想の展開ではありながら、リアリティのある話に引き込まれた次第です。

ラストはハッピーエンド。地元金融機関との最後のやりとりは痛快でした(私も一度ああいうことを銀行さんに言ってみたいものだと思いました)。これもテレビ化されるのでしょうかね。それはそれで楽しみです。



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