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高村薫の「李歐」 [読書]

李歐 (講談社文庫)

李歐 (講談社文庫)

高村さんの作品、久しぶりに読みました。日々現実逃避の気がある私としては、内面をえぐるような記述はつらいものがありますが、なんとか最後まで読み切ったという感じです(再読です。「わが手に拳銃を」のときよりしっかり読んだ気がする・・・)。
フツー?(やや変わってますかね、本書の主人公一彰くんは・・・)の青年の半生。何気ない日々の行動がいつの間にか大国間の抗争の文脈で語られるようになった展開は、少々驚きではありますが、ち密な構成ゆえか違和感を感じません。
ある種大変怖い内容ではありますが、現代のようにネットや仮想現実の世界でいつのまにか巻き込まれるという世界よりは現実の人間が絡み会話が成立している段階で今より少しはましかもしれません。
大陸に抱く夢・・・そんな夢想を抱ける時代ではないかなぁー 

京極夏彦の「虚実妖怪百物語」 [読書]


虚実妖怪百物語 急 (怪BOOKS)

虚実妖怪百物語 急 (怪BOOKS)

 
 
 
 
 
いやーこの本、3部作(序破急)になってますが、珍しく一気に読んでしまいました。
正に現代の世相を描いた作品!京極ファンとしてはこんな作品を待っていた!という感じですな。
本当にこのままでは日本という国家は崩壊しかねない、加藤保徳がくるぞ!ダイモンが来るぞ!って感じ。
馬鹿の余裕がなくなることで、国家が滅びるという視点は実にすばらしい、その通りだと思います。
最後の妖怪大戦争!いやー痛快でした。これって映像化できないもんでしょうか?実在の人物がたくさん出てますが、役者に代えて・・・ 


月村了衛の「機龍警察」(完全版) [読書]

機龍警察〔完全版〕 (ハヤカワ・ミステリワールド)

機龍警察〔完全版〕 (ハヤカワ・ミステリワールド)

この近未来的な小説の最大のテーマは、この小説が描かれている背景そのものにあるのではないかと思っています。世界中でなくならない戦争やテロ事件、日本国内の暗い世相・・・そもそも機龍警察そのものの存在がヤバイ状況になっているということでしょう。
警察小説として要素とSF的エンタテイメントの要素が入り混じりながらも、ある種のリアルさを伴うという点で秀逸な作品といえるのかもしれませんが、小説の中のイメージ全体が暗いトーンであることに、救われない気がしないでもないのです。
こんなメカが警察に配備されるような状況だけは避けたいものです。 

花村萬月ほか「決戦!桶狭間」 [読書]


決戦!桶狭間

決戦!桶狭間

 
 
 
 
 
年度末の忙しさにかまけてブログを更新する機会を大いに逸してしまいました。もう3月も中旬ですね。前回の2月末の更新から半月近くも経ってしまいました。この間4冊は読んだはずなのですが(いかん!何を読んだかもうるおぼえ…)、おいおい更新していきたいと思います。
さて、今回の決戦の場は桶狭間。冲方丁、宮本昌孝、富樫倫太郎、矢野隆、木下昌輝、花村萬月の各氏が桶狭間を舞台に決戦に関わった登場人物を設定、それぞれの視点から桶狭間を描いています。
決戦シリーズの面白さはこうした多面的視点からのアプローチ。もっとも、本作で唯一共通しているのが今川義元がいろんな意味で名君であったということでしょうか?ちょっとしたタイミングのズレがなければ、間違いなく上洛を果たしていたのではないでしょうか?
そういう意味で、織田信長という人はラッキーであったと同時に、何か持っている人だったに違いありません。
 
さて、次はどの時代のどんな決戦が舞台になるのか?楽しみです。 


万城目学の「バベル九朔」 [読書]


バベル九朔

バベル九朔


万城目先生お得意のSFファンタジーの世界。堪能させていただきました・・・とはいつつ、当方の期待が大きすぎたのか(はたまはた私の読みが浅いのか)、ややスケールが小さいような、こじんまりとした作品に思えました。私に本作を読みこなす余裕がなかったせいかもしれません。
独特の世界観、一風変わった登場人物、敵か味方かと思わせるキャラクター(ドロンジョ様的お姉さんはそそられます?)等々、万城目ワールド全開の作品です。
次回作に期待です。 
 

笹本稜平の「天空への回廊」 [読書]

天空への回廊 (光文社文庫)

天空への回廊 (光文社文庫)

 
 
 
 
 
私が読んだ本は9刷までいってました。ということは2004年の初版以降、随分と読まれている、買われている本ということになりますね。
スケールの大きさと海外の小説を思わせる構成等々、ホントよくできた作品、読ませる作品でした。山岳モノということもあり、専門用語が多く、場面によってはイメージできないこともありましたが、それぞれのキャラクター設定がしっかりしていて最後まで破綻することなく収束して良かった。
こんな小説を書ける人が日本人にもいるのですね。なんといってもキーキャラクターが最後まで生きていてハッピーだったことは良。ここまで読ませてこんな終わり方?とならなかったことで、読み手も報われた感じです。
面白かったです。他の作品も読んでみようかな。  

浅田次郎の「黒書院の六兵衛」 [読書]


黒書院の六兵衛 上 (文春文庫)

黒書院の六兵衛 上 (文春文庫)

 
 
 
 
久しぶりの更新です。
今回ご紹介するのは文庫になった「黒書院の六兵衛」。この本の内容をいちいち説明するとこれから読む人にとっては興ざめになってしまうのでやめますが、結論からいうと大変面白い作品でした。
時は幕末、徳川慶喜の大政奉還、鳥羽伏見の戦い、そして勝海舟と西郷隆盛の会談による江戸城無血開城・・・物語はこの無血開城が決まった直後から始まります。官軍側についた尾張徳川家の徒歩組頭である加倉井隼人(この人がもう一人の主人公。なかかないい味出してます)が官軍先乗りとして江戸城内に向かうと・・・・
世の中が大きく変わろうとしている時、人はそれぞれの立場で自らの保身に走る。卑怯といわれようがそれは人の性。勝ち組についた権力者は威張り散らし、負け組は言い訳と保身のための理屈をのたまう。
そんな「まあ時代がそうだからしょうがないよね」とか「せっかくこういってくれているんだから、甘えたら?」みたいなことをまったく否定し、体現した男・・・それが六兵衛です(詳しくは読んでもらった方がいいでしょう)。
勝海舟、福地源一郎、西郷隆盛、木戸孝允、大村益次郎、徳川家達、明治天皇、天璋院、和宮・・・幕末の名だたる人たちが登場します(チョイ役の人もいますが)。
このそうそうたる面々が六兵衛をめぐって右往左往する様はなかなかのものです。
お奨めの一冊です! 
 


万城目学の「悟浄出立」 [読書]

悟浄出立

悟浄出立

新年あけましておめでとうございます。
2017年最初の本は万城目学さんの「悟浄出立」です。この本、読み始めて「あれ?もしかして前に一度読んだかも?」と思いつつ・・・ブログにも感想を書いたような・・・と思いつつ、途中からは割り切って再読(おそらく)した次第。
万城目さんの一連のおちゃらけ要素(失礼)のくだりは一切なく、古代中国の人々を主人公にした真面目な(再び失礼)短編集となっています。
表題にもなった「悟浄出立」はおなじみ孫悟空の家来、仲間の沙悟浄が主人公。架空の人物ではありますが、脇役であり、孫悟空の引立て役である沙悟浄にスポットを当てた作品。本書のいずれの主人公もその短編で扱っている物語の中心から外れている人たちに光を当てている点が共通しています。
この辺、なかなか読ませるというかわが身にも通じるものがあって決して明るい話ではないのですが、心にしみわたるようなエピソードとして読ませていただきました。
「前を向いて行こう!」、たぶん本書の主題はそこにあります。 
 

山本兼一の「夢をまことに」 [読書]

夢をまことに

夢をまことに

2014年に亡くなった山本兼一さんの作品。山本さんが得意とする職人のお話です。主人公は国友一貫斎。名字からもわかるように主人公は鉄砲鍛冶職人です。
江戸も後期になると鉄砲の注文は少なくなり、国友村の鉄砲鍛冶も仕事がない状態。そんな中、新しい発想とバイタリティで時代を生きた職人のお話です。日本初の空気銃の製造万年筆や反射望遠鏡、潜水艦、飛行機・・・と一貫斎の興味は尽きることがなく、それらの製品を実際につくり、夢の実現に奔走します。
常に前向きであきらめることを知らない一貫斎。読んでいて元気をもらえます。
お勧めの一冊です。 
 
 

鳴海章の「全能兵器Aico」 [読書]


全能兵器AiCO

全能兵器AiCO

 
 
 
 
 
Aicoとは無人のステルス戦闘機に搭載された人工知能です。航空自衛隊のベテラン操縦士の経験とノウハウをベースに究極の戦闘能力を身に付けた最終兵器。
本来は中国やロシアのステルス戦闘機に対抗する意味で研究がつづけられていた技術、日本でも心神というステルス戦闘機が試験飛行の段階までたどりつきましたが、これに搭載するコンピュータ、頭脳として開発された技術が、新大東亜共栄圏を模索する一派により悪用の危機にさらされてしまうというお話。
人工知能としてAicoが自ら学習し、進歩していくことで制御不能に・・・とネタバレの話になってしまうので、あとはお読みくださいね。
本書の内容はほぼ同時代、現代の話です。新大東亜共栄圏は従来の国家という枠組みから外れた形で計画された陰謀。ないことはない、と思わせる展開。いわば現在の体制や枠組みをリセットする試みであるともいえます。そういう意味で大変リアリティのある話であり、恐ろしくもある。
ある種のシミュレーション小説ですな。それにしても戦闘機他の解説センテンスの分かりにくいこと・・・戦闘機オタクでない人にはつらい本です。