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磯田道史の「歴史の愉しみ方-忍者・合戦・幕末史に学ぶ」 [読書]

歴史の愉しみ方 - 忍者・合戦・幕末史に学ぶ (中公新書)

歴史の愉しみ方 - 忍者・合戦・幕末史に学ぶ (中公新書)

最近、歴史の常識と思っていたことが新たな文献などの発見によって覆されることが多くなってきているような気がします。
私的には、もう随分前になりますが、足利尊氏や源頼朝の肖像がどうやら違うらしい(源頼朝に関しては、最近は伝源頼朝と紹介されるようになってきたようですが)という話。教科書に載っていた肖像画から人物像をイメージしていただけに、それなりにショックだったことを覚えています。
歴史は過去ものであり、ましては時の為政者によって書かれている部分が多いだけに、一概に今の歴史的常識がその通りかといえば、大河ドラマや歴史小説のように一つの視点からこうじゃない?と想像するのが正しい見方かとも思うのですが、為政者や権力者の観点からではなく、市井の人々からみた歴史的事実(古文書等の文献等)が今までの常識を覆すような発見につながる可能性もあります。
磯田先生はそういう意味で新進気鋭の歴史学者であり、武士の家計簿や無私の日本人といった著作でも明らかなように、その時代の日常から得られた事実の積み上げによって新たな日本人及び日本国の歴史を語ろうとしているのではないかと思っています。
歴史は多面的に捉えることが重要だと思う私としては、今後も更なる活躍を期待したい学者先生だと思っています。

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「決戦!忠臣蔵」「決戦!新撰組」 [読書]

決戦!忠臣蔵

決戦!忠臣蔵

決戦!新選組

決戦!新選組

  • 作者: 葉室 麟
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2017/05/24
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
決戦シリーズもここまできたか!というネタふり。まさか忠臣蔵新選組という歴史ネタでも情緒的ステージにあるテーマに決戦シリーズがあてられるとは思いませんでした。
思えば忠臣蔵は古典的日本人?にとってはバイブルのようなものであり、ある種の滅私奉公的日本人を象徴するような話ではあるのですが、話をいろいろな観点からみたり分析すると、赤穂の浪士が忠臣であるかどうかは別として、徳川綱吉時代の法制や支配階級の気分、庶民感覚等がよく反映されていると思うのです。
赤穂浪士の本懐を遂げるまでのストーリーと究めて合理的なアプローチは冷徹さすら感じるところです。こうした多面的解釈が国民的歴史モノには必要です。神風の類もそう。
新選組についてはもう悲劇としかいいようがないという印象です。歴史に翻弄された、とはこういう人たちのことを指すのでしょう。それぞれの人物にスポットを当てる形での展開は他書でも実践されており、書かれている内容についても大きな驚きはないのですが、他書も含め共通しているのが近藤勇の描かれ方。新選組晩年における近藤のポジションがなんとも悲しい。
こうしたテーマでの決戦シリーズ。なかなか面白い企画でした。今後も期待!という感じです。

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磯田道史の「無私の日本人」 [読書]

無私の日本人 (文春文庫)

無私の日本人 (文春文庫)

無私の日本人 (文春文庫)

無私の日本人 (文春文庫)

  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2015/06/10
  • メディア: Kindle版
映画「殿、利息でござる」があまりにも有名になってしまったが、殿、利息~の元になったのは、「穀田屋十三郎」、その他に、「中根東里」、「大田垣蓮月」の二人の「無私」の方々のお話が本書には収録されている。
本書のあとがきに書いている通り、自他を峻別し、他人と競争することとは別の哲学が江戸時代の無名の普通の江戸人に宿っており、それがこの国に数々の奇跡を起こした・・・とあるが、まさに収録されている内容は、凡夫である私などには想像もつかない思想と行動。滅私奉公などという封建的なもの、次元とは異なる実話がかつての江戸の時代に起きたことは、江戸の文化・社会の奥深さ、日本人が持つ本来的な意味での力強さなのかもしれない。
「意必固我」(中根東里)、「自他平等の修行」(大田垣蓮月)など、その生き方や考え方に大いに共感、到底その境地にはたどり着かないまでも実践してみたいと思った次第・・・無私にはなれないけれど・・・

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北沢秋の「ふたり天下」 [読書]

ふたり天下

ふたり天下

哄う合戦屋 奔る合戦屋 翔る合戦屋 の合戦屋3部作で歴史小説ファンを魅了した北沢秋先生の久々の歴史モノです。

合戦屋シリーズでは地方の武士の生き残りをかけた闘争の3部作でしたが、本作は結城秀康と黒田長政という実在の、かつ歴史的著名人を主人公に据えた作品。関ヶ原以後の不安定な政治情勢にあって、もう一度天下をかき回してみようとたくらんだ黒田長政と出生時より疎まれながらの人生をおくってきた秀康の天下取りの野望の顛末を描いています。

もしかしたらあったかもしれない、という歴史小説にありがちな(小説なのでOKだと思ってますが)ネタを膨らませた話ですが、長政のフィクサーぶりがやや過剰な感じ。むしろ秀康の方に比重があった方が深みが出たような印象を受けました。長政はやや姑息な印象がぬぐえなかった。

合戦屋シリーズの延長と考えれば立花宗茂にフォーカスを当てた方がよかったかも。彼に対してはいろいろな評価があろうかと思いますが、本作の流れでいけばまさに合戦屋。

彼を主人公にした北沢先生の著作に期待です。

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土橋章宏の「引っ越し大名三千里」 [読書]

引っ越し大名三千里 (ハルキ文庫)

引っ越し大名三千里 (ハルキ文庫)

超高速! 参勤交代 (講談社文庫) 超高速!参勤交代 リターンズ (講談社文庫) で御馴染み、土橋先生の歴史モノ。松平直矩という実在の大名が山形姫路(以上、父親の代)→村上➔姫路➔日田➔山形➔白河という幾度も転封されたというお話。現在のサラリーマンでもここまではないという引っ越し履歴。土橋先生の作品だけに悲壮感はないものの、金策や減封に伴うリストラなど、さぞかし当時は厳しい状況だったことは想像に難くありません。それらの顛末を面白おかしくジェットコースターに乗っているがごとくのスピード感をもって一気に読ませます。

徳川綱吉の時代、敵は柳沢吉保。これも映画になるのかしらん。参勤交代シリーズに比べるとエンタテイメント性にはやや欠けますが、「無私の日本人」が原作の、 殿、利息でござる! [DVD] のような雰囲気を持った作品です。

天野純希の「燕雀の夢」 [読書]

燕雀の夢

燕雀の夢

歴史に名を遺した英傑たちの父親たちの話です。
上杉謙信の父、長尾為景
武田信玄の父、武田信虎
織田信長の父、織田信秀
伊達正宗の父、伊達輝宗
徳川家康の父、松平広忠
豊臣秀吉の父、木下弥右衛門
戦国から天下統一までの過程の中、いずれも地方の豪族にすぎなかった英傑たちの父。いずれも悲惨ともいえる最期を迎えた人たちでありながら、それぞれの子供たちが成長する何らかの下地を作ったということでしょうか?彼らがいなければ歴史は動かなかったわけで、そういう意味ではデカした!親父どの!という感じでしょうか。
戦国のクライマックスをすこしハスからみた感じで面白かった。お奨めの一冊です。

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富樫倫太郎の「北条早雲-明鏡止水篇」 [読書]

北条早雲 - 明鏡止水篇

北条早雲 - 明鏡止水篇

北条早雲の一代記もいよいよ晩年に差し掛かってきました。本篇は、小田原城奪取、伊豆に次いで西相模を手中に収めたところまで。
本シリーズ最大の敵、足利茶々丸を倒したくだりが本篇における最大のクライマックスだと思いますが、その最後は実にあっけないというか、描写としては淡々と描かれてている感じ。茶々丸の悪行ぶりはその容姿の描写と相まって迫力があるものの、早雲(伊勢宗瑞)自身があっさりかわしていることもあり、後のくる悲劇についても他の小説家であれば相当激しい描写になるところが平易な記述に終始しており、盛り上がりに欠けた印象もあります。
まあ、少ない兵力で知恵と常識破りの発想から国盗りを進めていく宗端の行動はさわやかではあるものの、物語としての強弱はあってもよいかな?とは思いました。
さて、次回作がおそらく本シリーズの最終話になるのでしょうか?残る直接的な敵は三浦氏。三浦道寸とその息子荒次郎が相手。特に荒次郎は、ゲームキャラ的に想像するに相当強烈。
物語の最後を飾る相手としては良いのでは?楽しみです。

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雫井脩介の「犯人に告ぐ2」 [読書]

犯人に告ぐ2 闇の蜃気楼

犯人に告ぐ2 闇の蜃気楼

テレビ化もされた「 犯人に告ぐ 」の続編。今回は振込詐欺グループが誘拐ビジネスを展開するというお話。ビジネスというところに意味があって、単純な身代金誘拐事件とは一線を画すというもの。
綿密な計画のもとで展開される誘拐ビジネスのスマートさには舌を巻きました。この本を参考に現実にこうした犯罪が起きないかと心配してしまいました。
もっとも一方の主人公である犯人グループの犯罪に関わるまでの心理、動機にいまいち納得がいかないというか浅い感じがしました。まあ 大した理由もなく犯罪に手を染める輩が多い中で、理由や背景を求めてもしょうがないのでしょうが、物足りなさを感じました。
天才的犯罪者「淡野くん」は依然野放し・・・まだまだこのシリーズ続きそうです。

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矢野隆の「鬼神」 [読書]

鬼神

鬼神

酒呑童子の話です。
京都の近くにある大江山に住まう鬼、酒呑童子とその一味を源頼光とその部下である四天王(渡辺綱、坂田金時、碓井貞光、卜部季武)が「退治」した伝説がベースになっています。坂田金時はご存知、金太郎さんですね。
この話、酒呑童子ら鬼とされた人々は、いわゆる「まつろわぬ民」であり、帝や朝廷にしたがうことなく、独自の文化、行動様式を持ったまごうことなき「人」であり、蝦夷や隼人といった人々を同じ人々を指します。
異民族扱いされるならまだしも「鬼」として位置づけられ、当時の民衆にとっても恐れられ、討伐すべきものとして正当化されました。
平安時代、藤原道長の時代、朝廷が日本全国を支配したとはいえ、実際には反朝廷を掲げるものたちや大和の支配を良しとしない勢力が日本全国に存在したことは想像するに難くありません。
本書の場合、酒呑童子(みずからは朱天と名乗っていたという設定)ら鬼の一族は「山の民」として朝廷の支配するところとは一線を画していたこと。大江山に資源があったことからその資源をわがものとするために朱天たちが邪魔だったことなどが物語のベースとなっています。最後は坂上田村麻呂と阿弖流為のように征服する側とされる側のリーダー間の心の交流が描かれていますが、物語を終息させる上ではお決まりのパターンともとれる展開。こうした鬼征討というストーリーによる正当化が実は一番怖かったりするのではないかと思ってします(少し飛躍しているかもしれませんが)。

読み物としては矢野さんの作品らしく、アクション満載で面白く読ませていただきました。

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荻原浩の「僕たちの戦争」 [読書]

僕たちの戦争 新装版 (双葉文庫)

僕たちの戦争 新装版 (双葉文庫)

「戦争」を現実のものとして感じている日本人はほとんどいないのでしょう。北朝鮮のミサイルだったり、その抑止に自衛隊の艦船がアメリカの空母を護衛したり、いわゆる「共謀罪」法案の可決等、世の中がどんどんきな臭くなっているという見方もある一方で、平和を目いっぱい享受している日常がある。
世界各地では依然として戦争状態にある地域があって、テロもやむことはなく、むしろ以前より増加している。そんな状況から危機感を煽りテロや戦争を回避するという名目のもとでロクな議論もせずに(少なくとも国会ではそもそもまともな議論になっていないような気がしますが)いろんなことがまかり通っている感じがどうもいやな感じがします。
本書は現代の青年と終戦半年前の青年とが入れ替わり、それぞの時代を生きる、という話ですが、現代から過去にタイムスリップした青年の行動が、戦前の価値観によって大きく変化していくという状況は、いくら本心では別のことを思っていても行動において逆らえない社会、状況になっていくという、ある種、恐ろしいことが描かれています。
そんなことにならないように(手遅れにならないように)私たちは世の中の動きに敏感になっていく必要があるのではないでしょうか。物語は実に軽いトーンで書かれていますが、それぞれの時代に生きる立場になったとき、耐えられるのか?本書を読んでみてしみじみ思った次第です。

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