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上田秀人の「竜は動かず-奥羽越列藩同盟顛末」 [読書]

竜は動かず 奥羽越列藩同盟顛末 上 万里波濤編

竜は動かず 奥羽越列藩同盟顛末 上 万里波濤編

竜は動かず 奥羽越列藩同盟顛末 下 帰郷奔走編

竜は動かず 奥羽越列藩同盟顛末 下 帰郷奔走編

  • 作者: 上田 秀人
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2016/12/07
  • メディア: 単行本
幕末の奥羽越列藩同盟関係の書籍は何作か出ていますが、仙台藩の玉虫左太夫にスポットを当てた著作は初めてではないでしょうか?もっとも玉虫左太夫とはそもそも誰?なる人物は誰?というところから言及すべきでしょうか?
妻の死をきっかけに仙台藩を出奔、江戸に出て林復斎のもとで学びながら林のネットワークの中で多くの人と交誼を結び、ついには日米修好条約の批准使節団に同行するまでになった人物。帰国後は仙台藩に召し出され、藩校の指南にまで出世するものの、幕末の動乱の中で主家を守るために奮闘、大槻磐渓とともに奥羽越連判同盟の成立にかかわり、軍事局副頭取の役職を得る。仙台藩降伏の後は主家をたぶらかし新政府に楯突いた責任を問われ切腹してその人生を終えた・・・
とまあ、こんな略歴ではありますが、尊王攘夷という大義名分の政治的対立のあおりをくらって失意の人生をおくってしまったという不遇の人といえましょう。彼はアメリカという国を実際にみて当時の日本にはない活力とその背景にある仕組み、社会を体感しました。また帰国の際には欧州各国の植民地の惨状を目の当たりにし、このままでは日本も同様になるとの危機感をいだきます。
勝海舟、久坂玄端、坂本竜馬等、幕末きっての人物たちと会い、これからの日本について議論を重ねますが(むろんフィクションでしょうが)、何かかみ合っていない。日本国内の目の前の勢力争い、権力闘争の大義名分と海外での経験から日本を俯瞰してみようとした玉虫の視点は全く交わっていなかったのではないか?それは硬直化した仙台藩や奥羽越列藩同盟の中でも同様で、玉虫の想いとは別次元で交わされるステージの中で結果として中途半端にならざるを得なかったということではないかと思います。
いずれにせよ、今まであまりスポットの当たらなかった人物を主人公に据えた本書は今までにない幕末ものとして楽しめました。欲をいえば帰国後からの展開に重きをおいても良かったのでは?なんて思いました。


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真保裕一の「脇坂副署長の長い一日」 [読書]

脇坂副署長の長い一日

脇坂副署長の長い一日

たった一日の出来事ながら、密度の濃い内容と言えます・・・とは言いつつ昨夜読了したのですが、もう一度読まないとなっ、と今思ってます。
物語の進行に合わせて時刻が表示されているのですが、「長い一日」というタイトルに引っ張られて読む側が煽られているような錯覚に陥り、内容を吟味するヒマもなく文字面を追っていってしまった感があります。アイドルの一日署長イベントの際にある種の事件が起きるのですが、その事件の背景や遠因を巡ってさまざまな登場人物がなぞの行動を引き起こす・・・ラストでその真相は明らかになるのですが、事件を追う側の動機なりモチベーション・・・こいつら絶対許せない的なものがよく伝わってこなかった(読み込めなかった)感じです。
ゆえにジェットコースター小説なのでしょうが、本作の面白さを見極めるには再読が必要と考えている次第です。しかし、あんな終わり方で主人公の脇坂副署長の将来が気になりました・・・警察組織内で二大派閥を敵に回して大丈夫なのでしょうか・・・なんてね。

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池井戸潤の「陸王」 [読書]


陸王

陸王


池井戸節全開の本作、楽しませていただきました!

今回の舞台は創業百年の伝統を持つ足袋製造業。目の付け所がなかなかですな。「下町ロケット」や「空飛ぶタイヤ」もいわゆる中小企業ですが、大企業に対する中小企業であって、モノづくりの会社としては規模も大きいと感じていました(正真正銘の中小零細しか経験の私にとっては・・・という意味ですが)。

小説としての組み立ての観点からみれば、下請け、孫請けという構図としての面白さはありましたが、本当の意味での会社の体力とかを考えると、ある種“贅沢”な闘いともいえなくはなかった。むろん人間ドラマとしての面白さが本質なので、作品自体を否定するつもりは全くありません。

さて、本作ですが、そういう意味では年商1億円にも満たない会社が新規事業に向かって突き進むというドラマに加え、駅伝、マラソンという要素を組み入れながらの展開は、ある意味面白くないはずはない!という作品です。

今回の場合、世界的にも大手であるスポーツ用品メーカーが主な敵役となりますが、今までの作品と比べると非常にわかりやすい相手であり、少々、露骨すぎるきらいがあったのが鼻についたかな。

むしろ、味方の側にいながら主人公の会社を支援できない・・・という角度の方が、物語としての現実味をより高めたような気もします。

いずれにせよ、さまざまな人たちが事業立ち上げに奔走する中で身につまされる部分もあり(一度会社をつぶしたものは会社をつぶす癖がつく、というくだりは痛っかった)、物語は究極の理想の展開ではありながら、リアリティのある話に引き込まれた次第です。

ラストはハッピーエンド。地元金融機関との最後のやりとりは痛快でした(私も一度ああいうことを銀行さんに言ってみたいものだと思いました)。これもテレビ化されるのでしょうかね。それはそれで楽しみです。



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